最近は「発達障害」という言葉がメディアや教育の現場でも多く取り上げられるようになりました。行政はじめ社会全体での支援の輪は広がりつつありますが、お子さまの健全な成長やご本人や家族が生活しやすい環境を作るためにも、まずは発達障害についての知識と理解を深めることが重要です。
発達障害は外見では分かりにくいことが多く、周りの人からは、「わがまま」「しつけができていない」などと誤解される場合もあります。ご自分を責めてしまうご家族の方もいますが、おうちでのしつけや育て方、環境などが発達障害の原因ではありません。重要なことは発達障害についての適切な知識を身につけ、早期に適切なサポートを行っていくことです。
発達障害について
発達障害とは、生まれつき脳の発達が通常と異なっているため、認知、言語、社会性、運動など、発達のしかたに得意なところと苦手なところがあるなど、凸凹があるのが特徴です。なぜ脳機能障害が起こるのかということははっきりと判明していません。
一般に、発達障害があるとコミュニケーションや対人関係に問題が生じやすいといわれます。その行動や態度は「自分勝手」とか「変わった人」「困った人」と誤解されることも少なくありません。症状は幼児期から現れ、集団生活の中で気づくケースが多く見られます。
発達障害の症状は多様であり、同じ症状名でも個人差がとても大きいことも特徴です。また、複数の症状が現れるケースも多くあります。障害ごとの特徴がそれぞれ少しずつ重なり合っている場合も多く、その症状がどのタイプにあたるかを区別し、障害の分類として明確に診断することは大変難しいとされています。
また、年齢や環境により目立つ症状が異なってくるため、診断された時期により診断名が異なることもあります。
発達障害者支援法
2005年4月、「発達障害者支援法」が施行されました。発達障害者支援法においては、「『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。」と定義されています。
長年にわたり障害者福祉制度の谷間に置かれ、その気付きや対応が遅れがちであった自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群、LD(学習障害)、AD/HD(注意欠如・多動性障害)などを「発達障害」と定義して、それぞれの障害特性やライフステージに応じた支援を国・自治体・国民の責務として定めた法律です。法律は全部で4章あり、25の条文で構成されています。
※法律条文(厚生労働省HPより)
http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0412-1b.html
※「注意欠陥多動性障害」は現在、「注意欠如・多動症」または「注意欠如・多動性障害」という診断名になっています。
発達障害の種類
発達障害の症状は多様であり、同じ症状名でも個人差がとても大きいことも特徴です。また、複数の症状が現れるケースも多くあります。障害ごとの特徴がそれぞれ少しずつ重なり合っている場合も多く、その症状がどのタイプにあたるかを区別し、障害の分類として明確に診断することは大変難しいとされています。
また、年齢や環境により目立つ症状が異なってくるため、診断された時期により診断名が異なることもあります。
発達障害は以下のように分類されます。
- 自閉症スペクトラム/自閉スペクトラム症(ASD)
- 自閉症スペクトラムは、かつて「自閉性障害(自閉症)」「アスペルガー症候群(アスペルガー障害)」「広汎性発達障害(PDD)」と呼ばれていた発達障害の一つです。2013年に改定されたアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5において、共通した特性を持った一つの障害「自閉症スペクトラム/自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)」として診断名が統一されました。ですが、ほとんど同じ意味合いで「広汎性発達障害(PDD)」として認識・使用されることも多くあります。
主に、他人と関わるのが苦手で目を合わせられないなど社会的関係の形成が困難、意思疎通がうまくできないためパニックに陥りやすい、興味や関心が狭く特定のものにこだわる、といった特徴があります。表情や行間を読むことができないためコミュニケーションをとることが得意ではありません。また、特定のものに過剰なまでに熱中する、規則的な行動にこだわりを見せるといった特徴があります。
自閉症(自閉症スペクトラム)
自閉症は、年齢や知的障害の有無、程度などによって非常に多様です。幼児期では「目が合わない」「他の子に関心がない」「言葉が遅い」などの特徴で気づくことが多く、その他、「一人遊びが多い」「指さしをしない」「人のまねをしない」「名前を呼んでも振り向かない」「表情が乏しい」「落ち着きがない」「かんしゃくが強い」「特定のものに興味やこだわりをもつ」などもよく見られます。
自閉症の半数以上は知的障害を伴いますが、残りの約3割は知的障害を伴わない症状で、これは「高機能自閉症」と呼ばれます。IQが標準(知的障害に分類されない)レベルであるため外見上は障害を持っていることがわかりにくいと言われます。高機能自閉症は、アスペルガー症候群の症状と重なる部分も多く分類方法には様々な意見がありますが、高機能自閉症の方が言葉の遅れがあり、より自閉的な特性が強いとされています。
アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)- アスペルガー症候群は、会話の能力はあるものの社会性やコミュニケーション、想像力に障害があり、自閉症に似た発達障害といわれます。
アスペルガー症候群には知的障害がないことから、特に高機能自閉症と同じように考えられる場合があります。
症状の程度に個人差が大きいのが特徴で、また、他の発達障害の症状と似ている部分も多く、さらに重なっているケースも多いことから、診断が難しいとされています。
アスペルガー症候群の子どもは知能や言葉の遅れがないので、一見普通に見えます。また、時に難しい言葉を使ったり優れた記憶力を見せたりするため発見が遅れがちになる傾向があります。
特徴としては、「話しかけても目を合わさない」、「じっと見つめ続ける」、「相手の反応に気付かず会話が一方的」、「話がかみ合わない」などが挙げられます。
その他、集団の中で他の人と感動したり面白いと感じるポイントが違うため場の空気に合わない行動をとったり、体の使い方が不器用、興味のないことには集中力が持続せず多動が出る、といった傾向も見られます。逆に興味を持ったことに対しては異常な集中力やこだわりを見せます。 - アスペルガー症候群は、会話の能力はあるものの社会性やコミュニケーション、想像力に障害があり、自閉症に似た発達障害といわれます。
- 学習障害(LD)(限局性学習症:SLD)
- 学習障害(LD:Learning Disabilities)には知的障害や知的の発達に遅れが見られず、“読む”、“書く”、“聞く”、“話す”、“推量する”などある特定の能力の一つまたは複数の分野において、理解や能力取得に困難が生じる障害です。
幼児期では、言葉の発達の遅れや偏りが見られ、手先が不器用で運動が苦手なケースが多く見られます。また、「落ち着きがない」、「みんなと遊べない」等の特徴が見られます。知的な遅れがないのに、はさみや折り紙、のりづけができない、ボタンのかけはずしができない、などの兆候から発見につながることもあるようです。
学齢期では、「集団場面での指示理解の悪さ」、「基礎学力面のつまずき」、「学習態度面の問題(離席等)」、「整理整頓の悪さ」、「集団行動の難しさ」等が見られます。これらの原因は、様々な感覚を理解しイメージとして統合する能力に問題があるためと言われています。例えば文字とイメージが一致しないため、文字が何を表わしているのかそもそも理解できないのです。
学習障害(LD)は特定の能力のみに障害があり、他の能力は正常なので、障害のある能力以外は高い能力を持っている場合もあります。例えば、算数の計算は他の子より速くできるし会話も流暢なのに、文章が読めない、字を書けない、というような具合です。このように、総合的には問題ないレベルであるにもかかわらず、ある特定の能力だけ極端に劣るといったバランスの悪さが特徴です。
- 注意欠如・多動性障害/注意欠如・多動症(AD/HD)
- 「注意欠陥・多動性障害/注意欠陥・多動症」は2013年に改定されたアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5において、共通した特性を持った一つの障害「注意欠如・多動性障害/注意欠如・多動症(AD/HD)」と診断名が変更されました。
注意欠如・多動性障害(AD/HD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は不注意・多動性・衝動性が見られる障害で、よく“落ち着きがない子”などと周囲に誤解されますが、程度は日常生活に支障をきたすレベルです。
主な症状としては、「勉強などで不注意な間違いをする」、「勉強や遊びで注意が続かない」、「興味のあることには集中しすぎる」、「物をよく失くす、忘れる」、などといった『不注意』、「落ち着いて座っていられない」、「過度におしゃべりをする」、「先生の質問が終わらないうちに出し抜けに答える」、「順番を待てない」、「他の子がしていることを遮る、邪魔する」、「思い通りにならないと手が出る」、などといった『多動性・衝動性』があります。
注意欠如・多動性障害(AD/HD)の症状は様々あり、現れ方も異なりますが、不注意のみ現れる場合、多動性・衝動性のみ現れる場合、不注意と多動性・衝動性の両方が現れる場合があります。なお、子どもによく見られる多動性は、大人になるにしたがい軽減される傾向があると言われています。
- グレーゾーン
- 上記の発達障害の特性や傾向、同じような症状があっても、診断基準を全て満たしておらず発達障害であると確定した診断を下すことができない場合、「発達障害のグレーゾーン」と呼ばれ、正式な診断名ではありません。
診断基準をすべて満たしていないからといって症状が軽いわけではなく、日常生活や社会生活、幼稚園・保育園・学校などの集団の中でコミュニケーションがうまくとれなかったり問題が起きてしまったりなどの困難さを感じるお子さまも多く、支援が必要な場合もあります。支援が必要なのか、単に個性的なだけか、が見極めにくい「グレーゾーン」の子どもたちへの対応が問題となることも多くあります。
勉強ができる子どもはグレーゾーンと気づかれないまま社会に出て人間関係や仕事上のトラブルを抱え、うつ病などを発症してはじめて障害が発覚する場合もあります。グレーゾーンの子どもたちに懸念されるのは、こうした「こころの健康」を害する二次的被害です。
診断がおりておらず、障害者手帳などを持っていないグレーゾーンのお子さまも適切な療育や児童福祉法に基づく支援や福祉サービスを受けることが大切です。障害者手帳が無くても、医師や専門家の意見書などで「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」の通所支援を受けることができます(※お住まいの自治体が発行する受給者証が必要です。地域によって異なりますのでご確認ください。)
子どもの発達障害への対応
発達障害は身体や知的の障害と違って明確な症状として現れないケースが多いため、通常、診断に時間を要します。特に軽度の場合は見逃されやすく、親も気付いていないケースがあります。
しかしながら早期に適切な対応をしないとお友達とのコミュニケーションや学校生活・社会生活が上手くいかなくなってしまいます。お子さまに辛い思いをさせることになるので、出来る限り早く気づき、対応することが大切です。
- 気付くポイント
- 発達障害は以下のようなコミュニケーション、情緒、学習面に兆候が現れやすいので、日頃から気をつけ、早期に気づいてあげましょう。
- ・他の子とのコミュニケーションや会話が苦手で、常に一人で遊んでいる
- ・人の話が聞けない、一方的に話すなど会話のキャッチボールができない
- ・急な予定変更や予想外の出来事にパニックになる
- ・大きな音や特定の音が苦手で、雑踏で耳を塞ぐことが多い
- ・学習面に著しい偏りがある(ある特定分野が著しく劣る)
- ・一度興奮するとすぐに治まらない、感情を急に爆発させる
- 発達障害と分かったら
- 発達障害は親が気づくよりも、保育園や幼稚園、学校、小児科、定期健診などで指摘されやすいのが特徴です。大きな発達の遅れが見られる場合は、専門機関での診察や療育を勧められます。
発達障害は早期にきちんと療育すれば症状を改善できると言われています。重要なことは、まず親が発達障害を受け入れ、周囲の理解を求めることです。適切な環境で必要な社会性を身につけさせることが、子どもの将来の生活環境に大きく影響します。
- 子どもへの接し方
- 発達障害に対しては、その障害を理解してから接することが大切です。
一般に情緒が不安定なことが多いため、大声で叱るとパニックに陥ってしまいます。接する際は、「否定しない」ことを心がけます。否定するとより頑なになってしまいますので、なるべく肯定した言い方をします。(例えば、「走るな」でなく「歩きます」)
また、発達障害の子は一度に複数のことを考え実行するのが苦手なので、指示する際は「具体的に」「簡潔に」「一つずつ」を心がけます。具体的に分かりやすく一つ伝えたら、子どもに考えさせるようにします。なお、抽象的に「頑張れ」と言っても何をすればいいのか理解できないので注意しましょう。
発達障害があると、対人関係でトラブルを起こしやすく、周囲から「こんなことも出来ないの?」という評価をされがちです。本人は努力したくても、こういった状況が続くと自尊心は傷つき、自己肯定感もなくなっていきます。叱られた理由も分からないケースがあります。そうすると次第に前向きな気持ちがなくなり、「どうせ私なんか○○だから。(だからやらない、やっても意味がない)」と考えてしまいかねません。もっと悪くなると精神に疾患が現れる場合もあります。これらは「二次的障害」と言われています。
発達障害には明確な治療法がなく、療育・訓練によって日常生活の仕方を学び取っていくしかありません。子どもの生きやすい環境を作っていくためにも、親は根気よく接していくことが必要と言えます。
まずはお気軽にお問い合わせください。
- 発達の遅れが気になるお子さま向け教室
- ハビーの児童発達支援(対象:0歳から6歳までの未就学児)・放課後等デイサービス(対象:(小学生、中学生、高校生)は、児童福祉法に基づく障害児通所支援事業です。発達障害(注意欠如・多動性障害、学習障害、自閉症スペクトラムなど)や発達が気になるお子さまに、ひとりひとりの特性や発達段階にあった指導方法、専門的な学習、コミュニケーション指導など様々な支援を行っています。
発達支援・幼児教育・療育・教育のプロとして、ご家族の立場に立ち共に考え、お子さまの成長、発達をサポートしていきます。